★ Washington D.C. Travel Report ★

12月26日(土) 曇りワシントン D.C. <Part4>

◆このページをとばすときは
ここをクリック◆◆◆

今日はWashington D.C.に来てこれを見ない手はないという美術館、博物館めぐりをすることにしました。いつものように、Georgetownから西へと車で向かいます。そして、いつものように、多少道を間違えながら、ダウンタウンにやって来ました。
今日はちょっと出足が遅れたのと、昨日と違って美術館、博物館が全て開いているせいか、駐車スペースが全くみつからず、ちょっと遠いビルの駐車場に止めて歩くはめになってしまいました。
The Capitol(議事堂)から西に伸びている細長い遊歩道というか公園のような地帯は、The Mallと呼ばれ、この中のWashington Monumentまでの西半分にNational Gellery of Art(国立美術館)などのほとんどの美術館や博物館が位置しています。しかも嬉しいことに、全ての入館が無料なのです!! (多分) 日本はもちろん、商業主義のNew Yorkでも考えられないことです。そして、それらの多くはJames Smithsonという、アメリカに来たことさえなかったのになぜかここに博物館を作るために遺産を残した英国人の寄付金で作られたSmithonian Institutionの一部となっています。私もここに来るまで、スミソニアン博物館という大きな建物がデンと建っているのかと思っていたのですが、そうではなくて、それぞれの展示内容によって分かれた博物館や美術館になっているのでした。
私たちが最初に訪れたSmithonian Castleというレンガ造りのきれいな建物は、その中の最初に建てられてもので、今は総合案内所のようなところになっています。

ここで、場所を確認して目指すNational Gellery of Artへと雪の遊歩道を歩いて行きました。すると、途中でよくわからない発音で「ヴァン・ゴッホ?」と道行く人に呼びかけている怪しげな黒人のお兄さんがいました。聞いてみると、自分はもうすでに手に入らないヴァン・ゴッホ展のチケットを持っており、1枚25ドルで買わないか?ということでした。このゴッホ展の噂は私も聞いていて、入場整理券をその日の朝から配るのですが、早朝から並んでいないとまず手に入らないとのことでした。見たいのはやまやまでしたが、この寒さで早朝から屋外に並んでまではちょっとなーと思っていたので、残念ながらほとんどあきらめていました。とは言っても、タダのものを25ドルも出すのは高すぎるので、断って歩きつづけていたら、後ろから追いかけてきて、「じゃあ、いくらなら買うか?」と言ってきたので、結局交渉の結果、2枚で20ドル(最初の言い値の半額以下ですね)で購入しました。後からつくづく思ったのですが、これは悪くない買い物でした。

そうこうして、National Gellery of Artに到着。ここは、もともとあった西館と、現代美術を展示するために新しく作られた東館に分かれていますが、まずはメインである西館から見ることにしました。そもそも財閥からの大量の名品の寄贈で出来たこの美術館のコレクションは、それからも相次いだ寄贈だけで今日あるような素晴らしいものになっているというのが、桁違いの金持ちが存在するこの国ならではのことなのかもしれません。
入ってすぐのところはD.C.の建物には多いドーム状の円形広場(Rotunda)になっていて、やはりクリスマスらしい飾り付けがしてありました。早速インフォメーションで館内の地図を手に入れ、さっき買ったチケットを見せてどうしたらよいか聞いたところ、指定時間の少し前からあそこに並んで待ってと指差されたあたりには長い列が広場の円周の半分くらいまでになっていました。2時のチケットだったので、その15分くらい前には並ぶとして、それまでの少ない時間で一番近い18世紀から19世紀のヨーロッパ絵画を見ることにしました。
1階のギャラリーはフランス絵画が中心だったので、ロココの時代から印象派まで有名画家の作品がずらり揃っていて、どこから見るか迷ってしまうほど。その中で印象に残ったものをいくつかだけご紹介します。(題名をクリックすると絵をご覧になれます。National Gallery of Artのネット上のコレクションとリンクしていますので、見終わったらブラウザの「戻る」でこのページに戻って下さい。)

Venus Consoling Love(愛の神を慰めるヴィーナス)」 Francois Boucher
女性を美しく描くことに定評があり、ルイ15世の愛人だったポンパドール夫人に気に入られたブーシェの作品。このヴィーナスは、実はその夫人がモデルで、同じように夫人をモデルにしたヴィーナスの絵がメトロポリタン美術館にもあります。ルイ15世が彼女の裸体を描かせたかったらしいのですが、この頃は単に女性の裸を描くことはまだ一般的ではなかったので、天使を配してヴィーナスに仕立てた一連の作品を描かせたそうです。これらの作品は、いずれも彼女の屋敷に飾られていたそうです。
「The Dead Toreador(死せる闘牛士)」 Edouard Manet
印象派以前のいわゆるサロン絵画の時代の画家としては型破りだったマネのこれもちょっと変わった作品。詳しいことは解説書にも書いてなかったので定かではありませんが、死んだ人が横たわっているところを描いているというところが、クールベらとともに、サロン絵画に疑問を持ちつつ描いていたという彼らしい感じがしました。マネの作品としては、この他に後期の作品としては、有名な「The Railway(サン・ラザール駅)」もありました。
「Woman with a Cat(猫を抱く女)」 Auguste Renoir
個人的に好きな画家のひとり、ルノワールのルノワールらしい作品。女性の髪の毛と猫の毛のフワフワ感がさすがですよね。女の子が赤いじょうろを持っている「A Girl with a Watering Can」もなかなかよかったのですが、猫好きなのでこちらに一票。

まだまだこの他にもセザンヌ、モネ、ターナー等々たくさんあったのですが、とても書ききれません。数はメトロポリタンの方がありますが、ちゃんとポイントを押さえたコレクション内容というのがさすがだと思いました。18〜19世紀のものだけでこれだけあるので、全部きちんと見ようと思ったらやっぱり半日では厳しいかなとこの時すでに思ってしまいました。

このあたりのいくつかの展示室を見ていただけで、もう時間になってしまったので、列に並ぶべく円形広場に引き返しました。並んでいる間にも、チケットが余っていないか数人の人に聞かれました。係員の指示に従って待つこと15分あまり、いよいよ待望のVan Gogh's Van Goghs(ゴッホ展)に入場しました。
今回の展示物のほとんどはアムステルダムにあるVan Gogh Museumから持ってきた作品だそうで、こんな規模でゴッホの作品を見ることができるのは、アムステルダム以外ではまずありえないとの評判でした。
狭い展示室に人がひしめきあっている状態でしたが、作品をいくつかの時期にまとめて年代順に、作品が書かれた背景やゴッホの手紙の引用などとともに展示してあってとてもわかりやすく、見やすい構成になっていました。
私たちもゴッホは特別好きな画家でもなかったので、こんなにじっくり彼の人となりから見るのは初めてでしたが、最初の油絵を書いてからわずか8年あまりの間に数々の作品を残し、最後は自ら命を絶ってしまった短かったけれど力強い画家としての生涯の情熱が伝わってくるような作品ばかりでした。
この中でのいくつかだけピックアップしてご紹介します。

「The Courtesan」 1887 Paris
今回の展示の中で最も印象に残った作品。親元を離れパリに出てきてからは、ゴッホもこの時代の他の画家同様、日本画の影響を強く受けますが、これは図案にそのエッセンスを取り入れたもの。パリで開かれた日本の挿絵展のポスターに使われた英泉という人の木版画を写しとって、それを中央に配した構図の油絵にしたものですが、日本画の図案とゴッホの色彩がマッチした不思議な雰囲気を持つ絵でした。題名のcourtesanというのは、高級売春婦とか情婦とかいう意味なので、「おいらん」のことだと思います。この他にも、日本画の背景からヒントを得たという、水色一色のバックに白い花のついた枝を描いた「Almond Blossom」など、日本画の影響を受けた作品がいくつかありました。
「Self-portrait as an artist」 1888 Paris
この頃に何枚も書いた自画像のおそらく最後の作品で、今回の展覧会のパンフレットの表紙にもなった代表作。あまり大きくないこの作品の中に、少し前に会ったスーラの影響を受けた筆使いや、独特の色調などゴッホのオリジナリティが凝縮されています。これを描いていた頃は、パリの厳しい寒さやワインの飲みすぎ(?)で体調もよくなかったようで、これを描き上げた後、気候のよいプロバンス地方のアルルに引っ越しています。
「Wheatfield with crows」 1890 Auvers
自殺した年の同じ7月に描いた生涯最後の作品。この前年、サンレミの精神病院に入院していたゴッホは退院後、パリの郊外のオーブルに移りました。この頃から彼の絵の評判は次第に高まり、初めて絵も売れたりしたのですが、創作に対する情熱を失い始めていたゴッホはついに7月の終わりに銃で自殺を図ります。自殺するまでの2ヶ月間、オーブルで描いた絵はどれもそうなのですが、この作品も孤独感や寂寥感に満ちています。きっとそれが自ら命を絶った彼の胸の内を表しているのでしょうね。
尚、こちらからバーチャルツアーもご覧になれますので、もっとよくご覧になりたい方はどうぞ。

すっかりゴッホに魅せられて、展覧会の画集まで買ってしまった私たちは、閉館までの残り少ない時間で、さっと東館の現代美術を見ることにしました。
こちらでは、EDO Art in Japan 1615-1868という日本の江戸時代の美術品の展覧会を開催していて、モダンな作りの館内には凧が掲げてありました。江戸展も整理券が必要だったらしいのですが、エレベーターに乗ったらなぜか江戸展会場に入ってしまい、少し見てまわりましたが、美人画や富士山の木版画の他、屏風や着物など、手の込んだものがたくさん展示してあって、皆足を止めて熱心に細部まで見ていました。やっぱり日本人だと見慣れているせいか、ふーんという感じで通りすぎてしまい、20世紀の画家の絵を見に行きました。
現代美術については、寄贈中心ということでこれから増えるのでしょうけれど、あまり数は多くありませんでした。そうはいってもやはり巨匠と言われる画家の作品などありましたので、少しご紹介します。

「Still Life with Sleeping Woman(静物と眠る女)」 Henri Matisse
いくつかあったマティスの明るい色彩で軽いタッチのマティスらしい作品。ピンク系を中心にした色合いと植物の明るい緑がいかにも気持ち良さそうな午後のうたた寝という感じで、なんだかほっとする雰囲気があります。
「Self-portrait(自画像)」 Paul Gauguin
タヒチの一連の作品が有名なゴーギャンのちょっと変わった自画像。これは、まだタヒチに行く前、パリにいた頃の作品で、この時彼はナビ派と呼ばれる画家グループに属したので、そのシンボルであった蛇と頭の上の円光を描いたのだそうです。この後、なにもかもが表面的に感じられたパリに嫌気がさして、より深い思考を求めてタヒチに移り住み、エキゾチックな数々の作品を残しました。
「Hope is: Wanting to Pull Clouds (希望とは:雲をひっぱりたいと思うこと)」 Sigmar Polke
入り口から階段で降りた半地下のようなところにある大きさで圧倒された作品。織物にアクリル絵具などで描いたものですが、5m×3mの大きさです。そのままの題名が表す通り、人が雲に縄をかけて引っ張っているところの絵なのですが、ドイツ人のポルクという人が1992年に描いたまさにごく最近のものです。現代美術というと抽象的なものが多い中で、イラストレーションのようでわかりやすかったので、印象に残りました。
この他、東館にはホイットニー夫妻の寄贈したコレクション(Collection of Mr. and Mrs. John Hay Whitney)を集めて展示してあり、ロートレックにしては大きな作品である「Marcelle Lender Dancing the Bolero in "Chilperic"」や、ジャングルの幻想的な絵が多いルソーのいろいろな種類のサルがかわいい「Tropical Forest with Monkeys」などもありました。
そろそろ閉館時間となってしまったので、お目当てだったフェルメールなど見残してあるものは明日再度見に来ることにして、美術館を後にしました。

あとこのThe Mall付近でまだ開いている博物館は・・・と探したら、National Air and Space Museumに人の出入りが見られたので、急いで入館しました。
ここもSmithonian Insutitutionのひとつで、名前の通り、飛行機や宇宙船の模型や疑似体験ができる施設、立体映像のIMAXシアターなどがあるので、子供たちに大人気でした。私のここでのお目当ては、昔なつかしアポロ11号が人類史上初めて月に着陸した時に使った月探査船。
あれは大ニュースだったので、かなり小さかったのによく覚えています。その後、幼稚園でみんなで宇宙ロケットや月探査船の絵を描いたのでした。(ヤバイ!歳がバレバレですね。) 実物と同じように作った模型らしいのですが、他に展示してある最新の宇宙飛行船と比べるとなんだかかなりチャチな感じがしてしまいました。
他に目をひいたのは、イラク攻撃などですっかりお馴染みになったトマホークミサイルの模型。こんなの堂々と展示していいのでしょうか?
この博物館はとにかく子供が多くて、閉館まであと30分くらいしかないというのに、Star Warsなどの人気アトラクションには長蛇の列ができていました。さすがにそれに加わるほどSF好きでもないので、博物館をざっと見まわっておしまいにしてしまいました。ここも好きな人なら1日いても飽きないところかもしれませんね。

一度、ホテルに戻った後、今夜出かけたのはその名もThe Dancing Crabというカニを食べさせる店で、Georgetownから車で15分ほどのところでした。カニ好きの夫の一押しだったのですが、席に着いてからオーダーする時に「今日はもうまるごとのカニはない。」と言われ、ちょっとがっかり。まるごとのカニを注文すると、木槌のようなものを持って来てくれて、それで殻を割りながら中身を食べるのがおいしかったのに・・・とのこと。
しょうがないので、アラスカ産のカニの足を食べましたが、身が詰まっていてそれも結構いけました。ビールを飲みながらカニをお腹一杯食べて、ひとり30ドルくらい。ちなみに、電話番号は (202)244-1882 です。まるごとのカニがあるかどうか確認してから出かけた方がいいかもしれません。

明日も、またThe Mallに出かけて、National Gallery of Artの続きと、ナチのユダヤ人迫害の悲劇を伝えるために5年前に作られたHolocaust Memorial Museumに行ってみる予定です。

前の日(12月25日前編)に戻る次の日(12月27日)に進む


Washington
12月24日12月25日
(前 編)
12月25日
(後 編)
12月26日12月27日12月28日12月29日
2001年4月に出かけた
桜の季節のWashington D.C.
もよかったらご覧くださいね。
※ 違う日を見たいときはこちらから!

★ Washington D.C. Travel Report ★

This page hosted by Get your own Free Home Page