| 12月28日(月) 曇り |
首都ならではの合衆国の各施設をツアーで見学する今日は、まず昨日外だけ見たCapitol(議事堂)から始めました。アメリカのというか今や世界の政治の中心とも言えるこの議事堂のまわりは小高い丘のようになっていて、ここをCapitol Hillと言います。ニュースでレポーターが立って議会の決定を伝えたり、政治ニュースの時の背景で使われるのがこの辺です。ある意味ではWashington D.C.を象徴する建物と言ってもいいかもしれません。ちょっとわかりにくいのですが、ドームの頂上のところに立っているのは自由の女神像です。
それを観光客が見逃すはずがなく、そんなに出遅れてもいないのに、入口から建物と同じく白い石作りの立派な階段を下って前の広場までずらーっと長い列ができていました。多少並ぶだろうとは予想していましたが、まさかここまですごいとは思わず、ちょっとひるんでしまいましたが、ここまで来てやめるのもなんだか悔しいので、寒空の中、列に加わりました。家族連れが多かったのですが、さすがに子供たちはじっとしているのがつらいらしく、階段で遊んだり、兄弟同士でけんかして両親に怒られたりと、なかなかにぎやかな行列でした。とはいっても、かなり寒かったので、足元から徐々に冷えてきて、自然に足踏みをしながら30分以上待ってようやく中に入ることができました。夏にここで射撃事件が起こって、観光客が巻き込まれて被害にあったのは記憶に新しいところですが、そのあおりで警備が厳しくなり、入場制限があったり、持ち物検査を厳重にしたりしているので長い列ができてしまったようです。
入ってすぐの広場は、ここWashington D.C.でおなじみになったRotundaという円形広場で、そこからすぐ見学ツアーが始まりました。
このRotundaは高さが約60mあり、天井には「Apotheosis of George Washington(ワシントン賛歌)」という題名のフレスコ画が描かれていました。また、周囲の壁には巨大な絵画が掲げてあり、これらはコロンブスの大陸発見、独立宣言の調印式などいくつかのアメリカの建国にあたっての重要な出来事を描いたものでした。ただの玄関ホールにしてはずいぶん飾り立てている気がしましたが、それもそのはず、ここは様々な儀式に使う場所だそうで、最近では南アフリカのマンデラ大統領へのメダル授与式を行ったそうです。
ここで、アメリカの国会議員についての説明がありました。簡単にまとめると、以下の通りです。
| 上院議員(Senetor) | 下院議員(Congressman) | |
| 定 数 | 100名(各州2名ずつ) | 435名(有権者数に応じて決定) |
| 任 期 | 6年 | 2年 |
| 改 選 | 2年毎、3分の1ずつ | 2年毎、全議席 |


上院の会議場は、そのままSenate Chamberといいますが、こちらは人数が100人と少ないながらも、スペースはそう変わらないので、机の付いたひとりひとりの座席になっていました。しかも席は決まっているそうです。ちょうどクリントン大統領の弾劾審議が始まる前だったので、中継用のテレビカメラが何台かセットしてありました。下院と同じように、2階席に座って見ていたのですが、たまに会議場に直接出入りしている、どう見ても観光としか思えないような人たちがいましたが、どうやら議員のコネがあればそれができたみたいでした。選挙権のない私たちにはちょっとムリでしたけれど。
「行政」のあとは、「司法」の場所を見に行こうと、すぐそばにあるSupreme
Court(最高裁判所)に行ってみました。ここも白亜の大きな建物でさすが首都という風格がありました。確か見学ツアーがあるはずと思って入口で聞いてみたら、次のツアーは議員の手紙持参の人たちの特別見学者のツアーなので、一般は1時間以上後にしかないとのことでした。当然議員の手紙を持っていなかった私たちは、見学をあきらめ、中をチラッとのぞいてここを後にしました。やはり、首都では議員の後ろ盾が大変威力を発揮するのだということが、今回よくわかりました。
続いて私たちは、ホワイトハウスの東側、Federal Triangleという連邦政府機関の建物が集まった官庁街にあるFederal Bureau of
InvestigationことFBIに向かいました。前からアメリカのミステリー小説好きの私は、なかなか迫力ある展示を見せてくれるというFBIの見学を楽しみにしていました。映画化されたThomas Harrisの「羊たちの沈黙」はもちろん、Patricia
D.Cornwellの「検屍官」シリーズ、Jeffrey Archerの「大統領に知らせますか?」(この小説の内容は「ちぃたろうの部屋」の中のジェフリー・アーチャーのページでご覧下さい。)など、FBI捜査官が活躍する小説をよく読んでいたので、ぜひ実際に見てみたいと思っていたのでした。
近未来をイメージしたらしい、ちょっと変わった形のE.Hoover Buildingに本部があり、見学ツアーもここで行われるので、指示に従ってツアー入口に行ったところ、受付のお姉さんが「外で2時間半待つけどいい?」と確認しながら中に入れていました。ひえー、また待つのーとは思いましたが、見たかった場所だし、明日は最後の日でホワイトハウスという大物が控えているので、またもや覚悟を決めて待つことにしました。
確かに、待つ場所は中庭のようなところで屋外ではありましたが、ベンチがあったので座って待つことができました。また、その場所には屋根からモニターが吊るされていて、そこではFBIが活躍した犯罪捜査の歴史や特別捜査官の訓練場所であるFBI Academy(Quantico)での訓練の様子などのビデオを流していたので、寒いながらも結構楽しめました。それによると、FBI Special
Agent(特別捜査官)は、23歳〜36歳までの大卒以上の学歴を持つ合衆国民で、麻薬による犯罪歴が14回以上ない人に応募資格があるそうです。14回という妙に多い回数もなぜだかよくわかりませんが、ビデオではそう言っていました。(ホームページの応募要領には書いてありませんでした。)職種は専門分野にわかれており、応募時にそれぞれの分野に応じた学歴か職歴も必要なのですが、捜査官になって最初の2年間はペアを組んで一般的な捜査にあたるそうです。また、16週間にも及ぶQuanticoでの訓練は体力、精神力をかなり必要とするので、その辺も重要な要素になってくるようでした。
と、かれこれ2時間近く待って、ビデオもそろそろ一周したかなという頃に、私たちは今日の見学者はここまで、という最後のグループに組み入れられ、ようやく館内に入ることができました。
案内係の人に20人弱のグループで連れられて中をまわりましたが、やはりここは写真撮影禁止でした。過去の凶悪犯罪を示す銃のコレクションや、犯罪者の見分け方で、「刺青があってしばしば小指がない」などとやくざの写真のパネルもあったりして、なかなか興味深かったです。また、実際に使っている研究室をいくつか見た中に、あのMonica Lewinskyがクリントン大統領と性的関係を持ったときに着ていたというドレスのDNA鑑定をした研究室もありました。今は、ほとんどの州でDNAが証拠として採用されるとのことですが、鑑定のためには髪の毛一本で十分なんだそうです。ちょうど今、New
York州でも犯罪者の指紋ではなくてDNAサンプルを採取してデータベース化することを知事や市長が提案しているところです。それから、指紋の採取も、昔ながらの粉状の薬品を使うのではなく、レーザーのようなもので検出しているのだと説明してくれました。
そして、このツアーのフィナーレは、本物の特別捜査官による射撃の実演とQ&Aでした。特別捜査官は、背が高い中年のきりっと引き締まった感じの女性で、良さそうなやや短めのスカートのスーツを着ていました。自己紹介のあと、彼女はその格好のままガラスを隔てた実演室に入り、いくつかのタイプの銃で的を見事に射抜いてみせました。捜査官を代表して実演するのが女性というのも、さすがアメリカですね。その後のQ&Aでは、子供の質問も多かったのですが、「あなたは実際に人を撃って傷つけたことがありますか?」という質問に対して、「私は13年間FBI捜査官としてのキャリアがあるけれど、そういう状況になったことはありません。」と言っていました。確かに、皆が皆、Jodie Fosterのようにいきなり人を撃ち殺したりするわけではないですよね。それは「太陽にほえろ」の七曲署の刑事たちと普通の警官が違うのと同じですね。
ずいぶん待ったけれど、かなり楽しかったFBIで今日の観光は終わりにしました。待ち始めた頃はまだ日も高かったのに、ツアーが終わって外に出たらもう真っ暗になっていました。今日は待ち時間がかなり長かったので、効率はよくありませんでしたが、後から見れば、まあこんなものだったのでしょう。最後の日はもっとすごかったので・・・
最後の夕食はそんなにおいしいわけではないとはわかっていつつも、とうとう我慢しきれず、日本食を食べに行ってしまいました。Washington D.C.はNew Yorkに比べれば、はるかに日本食レストランの数は少ないので、まあ値段のわりには味はたいしたことないというのが夫の解説でしたが、久しぶりに食べたせいか、ご飯ものやしょうゆの味が大変おいしく感じられました。
明日はいよいよ最終日。ツアーが火曜日〜金曜日しかなくてクリスマスはお休み、と今まで見学のチャンスがなかったホワイトハウスに挑んできます。
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2001年4月に出かけた 桜の季節のWashington D.C. もよかったらご覧くださいね。 | ||||||||||||||