★ Washington D.C. Travel Report ★

12月27日(日) 曇りワシントン D.C. <Part5>

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今日も昨日に続いてThe Mallを中心に美術館、博物館めぐり。いつものように車でGeorgetownから西へに向かいますが、今日は昨日の教訓をいかして、朝食をとらず早めに出発しました。
Washington D.C.は計画的に出来た都市なので、東西に走る道はアルファベット順、南北に走る道は中心となるCapitol(議事堂)に近い方から1st、2ndと数字順に名前が付いています。一見わかりやすそうなのですが、この他に要所(White HouseUnion Stationなど)からは放射線状に道路が伸びていて、これがクセモノなんですよね。
この放射線状の道には、New YorkとかMassachusettsとか州の名前がついていて、これらの道が交わるところには、真中に銅像の立ったサークルがあります。ご存知の方はご存知だと思いますが、ロンドンにあるあれです。サークルに入った時、うまく内側だの外側だのの車線を選ばないと、曲がりたいところで曲がれなかったりするのです。加えて、この道路は東西とか南北ではなくて斜めに走っているので、方向が逆だとかなり思いがけないところまで行ってしまたりして、2年住んでいた夫でさえ、勘を取り戻すのに結構かかったので、観光でいきなり来て運転するのは至難の技に思えました。しかも駐車場はないから、常に駐車スペースを探さなくてはいけないし。
ということで、慣れて来たサークルも完璧に通り抜け、なのになぜか昨日とは違う道で、ダウンタウンにやって来ました。今日は美術館、博物館の開館時間前に着いたので、かなりよい場所に駐車することができました。
早速、目指すNational Gellery of Artに行ってみたら、日曜日の今日は開館が11時とふだんより1時間遅かったので、それまで寒さをしのぐためにもどこか開いているところを・・・と探したら、またまたNational Air and Space Museumが開いていたので、もぐり込み、展示は素通りして、中のカフェで朝食をとりました。こういうときに入場料がタダというのは便利(?)ですよね。

さて、開館時間が過ぎ、近かった東館の方から入って、地下の連絡通路を通って西館に行こうとしたのですが、地下の売店はEDO Art of Japanの関連グッズを販売しており、どんなものがあるかちょっと興味があったので立ち止まって見てみました。美術書やポスターはもちろん、小さなやっこ凧や千代紙、ツルの折り方が描いてある学校用のような無地の折り紙までありました。江戸展を見た後はノリでこういうものを買ってしまう人もいるのだろうか・・・と思いながら、動く歩道を通って西館に向かいました。
昨日ここの美術館の作品カタログを買ってあり、ホテルに戻って見残しているものをチェックして来たので、今日はバッチリです。1階の一部で特別展をやっているため、通常のフロアプラン通りでないものについてはどこにあるかをインフォメーションで確かめ、充実していると評判の13〜16世紀のイタリアの作品とフェルメールやレンブラントを含む17世紀以前のヨーロッパ絵画をじっくり見ました。これも素晴らしいもの揃いでしたが、幸いゴッホ展に皆気を取られすぎてしまったのか、展示室がすいていたので、ゆっくり見ることが出来て、すごく満足しました。また、この中からいくつかご紹介します。(題名をクリックすると絵をご覧になれます。National Gallery of Artのネット上のコレクションとリンクしていますので、見終わったらブラウザの「戻る」でこのページに戻って下さい。)

Madonna and Child(聖母子)」 Fra Filippo Lippi
宗教画がほとんどであった15世紀のフィレンツェの画家、フラ・フィリッポ・リッピのマリアと幼子キリストの絵です。この頃は、油絵ではなく卵の黄身を使ったテンペラという画法で絵を描いていました。マリアの着ている服の青い色は、当時青い顔料が手に入りにくかったことから高貴なもの、純潔とか潔白とかを表す色だったそうです。この画家自身は僧侶だったのですが、ずいぶん女癖が悪い人だったらしく、絵があまりにも上手だったので破門されずに済んだとの逸話があるそうです。ボッティチェリの師であったことでも知られています。
Ginevra de' Benci(ジネヴラ・デ・ベンチ)」 Leonardo da Vinci
アメリカにはこれ1枚しかないというあのレオナルド・ダ・ヴィンチの初期の肖像画。展示も特別扱いで、これだけが壁からちょっと出っぱった柱状のところに展示してありました。ルーブル美術館のモナ・リザをご覧になったことのある方はおわかりいただけると思いますが、これも思ったより小さな絵でした。この頃はまだテンペラ画が主流であったのに対して、ダ・ヴィンチはいち早く油彩を取り入れたひとりだったそうで、それが微妙な輪郭やぼかしに活かされています。
The Repentant Magdalene(マグダラのマリアの懺悔)」 Georges de La Tour
暗闇を照らすろうそくの光が印象的な17世紀の画家、ラ・トゥールの作品。聖書の中に出てくる高級娼婦だったマグダラのマリアは、イエス・キリストの説教を聞いて、改心して以後イエスの弟子ともいえる存在になるのですが、これはその悟りを開いた瞬間を描いた4連作のうちのひとつです。メトロポリタン美術館にもそのうちの1作品があり、全く同じモチーフなのですが、また違う印象があります。残りはルーブル美術館などにあるそうですので、いつか他の絵も見て比較してみたいと思っています。
Woman Holding a Balance(天秤ばかりをもつ女)」 Johannes Vermeer
メトロポリタン美術館で西洋美術講座を受講してから、すっかりファンになってしまい、今回楽しみにしていたフェルメールの作品のひとつ。謎だらけの17世紀のオランダの画家として、最近注目を集めていますが、今のところ残した作品の数は30点前後ではないかと言われており、そのうちの大部分がアメリカにあります。メトロポリタンにも5点あり、ここにはこれを含めて4点ありました。独特の光の反映と柔らかいライン、なにげない瞬間をとらえた構図等々で一番よかったのがこの作品です。他の作品で「A Lady Writing(手紙を書く女性)」も見てみたかったのですが、残念ながら今は展示されていませんでした。

この他にもレンブラント、ゴヤ、ベラスケス等々、昨日見た18〜19世紀のもの同様、ポイントを押さえたコレクション内容はさすがでした。National Gallery of Artは、またいつかWashington D.C.に来た時も、必ず立ち寄ろうと堅く決心しました。

東館のすぐ西にCapitol(議事堂)があり、そこにも大きなクリスマスツリーがあるのが、昨日から気になっていたので、写真を撮りに行きました。議事堂の前の池はほとんど氷でおおわれていて、たくさんのカモメが氷の上に立っていました。
目的のツリーはNorth Carolina州からの寄贈というかなり大きなもので、見方によっては昨日見たNational Christmas Treeより立派でした。後ろにそびえる議事堂は、こちら側には入り口はなく、いわゆるCapitol Hillといわれるこの小高い丘をぐるっとひとまわりしなくてはいけなかったのと、今日は見学ツアーがないとのことだったので、明日中は見ることにして、次は、Holocaust Memorial Museumへと向かいました。

The Mallから少し南東にはずれたところにあるHolocaust Memorial Museumは、ほかの美術館、博物館とは趣を異にしたナチのユダヤ人迫害の悲劇を伝えるために作られた博物館です。出来てすぐにここを一度訪れている夫や他の人の話で、ここは生々しい展示物や衝撃的な映像があるとは聞いていました。
入り口を入ってすぐのHall of Remembranceは、彼らが収容されていたゲットーを模して作ってあり、ここからして少し暗い雰囲気になります。前は必要なかったらしいのですが、ここも一部の展示を見るためには、時間を指定した入場整理券が必要で、今日の分はもうすでにないとのことでした。しょうがないので、地下で短いオリエンテーションのフィルムを見た後、整理券なしでも見ることができる展示を見てまわりました。
「アンネの日記」を学生時代に読まれた方は多いと思いますが、そのアンネと同じように幸せな暮らしから一転、ユダヤ人であるがために学校にも行けなくなり、やがて隠れ家生活を経て、強制収容所に送られ家族とも離れ離れになってしまったダニエルという少年の物語を、実際の場面のように作ったセットと映像で見せる子供向けの展示室がありました。確かに子供はこれを見て、彼のたどった運命からその頃どんなことが行われたかを理解するのにちょうどよいアトラクションでした。
ただ、皆が生々しくて衝撃的、という展示は整理券がないと入れないところだったので、あきらめていたら、なぜか2階のスロープの人が出入りしているあたりから、その中に紛れ込んでしまい、ちゃっかりそれらの展示も見て来てしまいました。
当時の実際の映像を流している画面は、少し高くなっている塀のようなところに囲まれて、水平に置いてあり、のぞき込んで見るように置いてありました。これは、小さい子供が見ることができないようにするためにそうなっているのだそうですが、なぜか私も背伸びをしないと見れませんでしたが。
それから、印象的だったのは、収容所で殺された人たちがはいていた靴をどさっと積んで展示してあったもので、積み重なった黒っぽい布の靴が、彼らの運命を暗示しているみたいで悲しげでした。
その他は、「シンドラーのリスト」のように、子供たちを始めユダヤ人たちをかくまってナチから救った人たちを紹介した展示もありました。その中には、去年のアカデミー賞の短編映画賞を取った「Visas and Virtue」でも取り上げられた「日本のシンドラー」と言われている杉原千畝さんも紹介されていました。
この博物館の全体的な印象としては、かなりの量の資料をよく整理して展示してあると感じました。出来るだけ多くの事実をそのまま伝えようということだと思いますが、それを支えたのは、アメリカで成功した多くのユダヤ系の人々からの資金援助ではないかと思います。

この後、Natural History Museumにも行ってみたのですが、ここは館内が工事中だった上、内容的にもやや子供向けのような感じだったので、トイレに寄っただけで、The Mallを後にしました。

そして、すっかり暗くなったので、ポトマック川を臨む夜景がきれいなWashington Harbourまで足を伸ばしてみました。
中央の広場のようなところには、クリスマスツリーが立っていて、雰囲気としてはちょうど東京の天王洲のような感じのところでした。川辺には板張りの遊歩道のようなものがあって、ここも夏はデートスポットになるのでしょうけれど、この寒さでは歩いている人もほとんどいませんでした。川向こうには、ビジネス街であるRosslynのビルのクリスマス用のライトアップがきれいに見え、同じ川岸にはコーヒーテーブルのような四角いKennedy Centerが川べリに白く浮かびあがるように見えていました。
まだ時間もちょっと早かったのですが、寒かったので、今日はここにあるTony & Joe's( Tel: (202)944-4545 )というシーフード・レストランで夕食をとりました。シーフードといってもアメリカ料理なので、味はまあまあ普通でしたが、クラブケーキが割とおいしかったです。

クリスマス、土日を経て、明日はやっと平日になるので、Capitolその他、観光ツアーのあるところに行って、おのぼりさんして来ます。

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2001年4月に出かけた
桜の季節のWashington D.C.
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